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秋山陽一「フットボールの憂鬱」を読んで

先週来、海軍兵学寮と工部大学校における日本“フットボール”の起源に関する文献を紹介してきましたが、実は秋山陽一「フットボールの憂鬱」『ラグビー・サバイバー』(双葉社,2003)p.203-238 は未読で、昨日初めて読みました。従って、先週来当日誌に書いたものは秋山氏の書いたものをふまえたものではありません。

秋山氏は実に詳しく文献調査をしています。海軍兵学寮と工部大学校に関する公刊史料は限られていることもあって、沢鑑之丞著『海軍兵学寮』(興亜日本社,1942)や『旧工部大学校史料・同附録』(青史社,1978)』など私と同じ文献から引用されています。

同じ文献から異なる見解が引き出されているわけですが、具体的にどこが異なるのか述べておきましょう。

1.引用箇所

秋山氏の著作p.212に“澤鑑之丞の別の著書「海軍兵学寮」でも、午後に毎日砲術訓練が取り入れられた当初、生徒たちは身体が大いに疲労を感じたが、後には次第に活気を増し愉快に外業を学ぶようになったと述べている。”とあり、澤(沢)の『海軍兵学寮』(興亜日本社,1942)を読んだことが記されています。

この本の明治7年の部分に“また、「フットボール」(蹴球)もイギリス教師より教を受けて、寮内馬場に於て、甲乙両部にわかれ仕合を致しました。”という一行があり(p.248-250のうちのどこか)、1874年当時の在籍者が“フットボール(蹴球)”をしていたとの「証言」があるのですが、不思議なことに(笑)秋山氏はこの部分に言及していません。

秋山氏は、

“日本では、明治から大正時代にかけてア式とラ式といういい方で2つのフットボールを区別してきたが、昭和に入ると、ア式は蹴球を名乗り、一方は単にラグビーとなった。”(p.206)

とも述べています。1942(昭和17)年に出版された『海軍兵学寮』に“「フットボール」(蹴球)”と記されていて、“「フットボール」(ラグビー)”でないのは、秋山氏の説に従えば、海軍兵学寮はサッカーをしていたことになってしまいます。これは秋山氏のオウン・ゴール・・(笑)。

2.兵学寮の在籍者構成と競技の性格

秋山氏はまた、“武士階級の出身者で占められた生徒たちはフィジカル面でかなり劣っていた。”(p.212)とも記しています。この一文は1873年に来日した教師団がその年にいきなりフットボールをやらせたのではなく、運動場を整備した1874年以降のことであろう、という文脈の中にあります。

しかし、どちらのフットボールを生徒にやらせたかを考察する上で、生徒の“フィジカル面”は重要なポイントになると思われます。

7/13付け当日誌に記したように、

a) 生徒に幼年のものがかなりいた。加藤友三郎(日露戦争時の連合艦隊参謀長、後海相、首相)は1861年生まれ、1873年12歳で入寮している。
b) イギリス人教師団が来日するまでは座学が中心で病弱なものが多くいた。
c) しかも、生徒全員球技は初心者である。

という点で、生徒にはラグビーよりサッカーのほうがふさわしいと私は考えるのですが、西村氏の視点にはこの点からの考察が欠けているように思われます。

 また、西村氏のあげている文献的根拠では、兵学寮がラグビーをやっていたとするにはちょっと無理があるとも思いました。

 

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Comments

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Posted by: Maíra | February 23, 2006 at 10:22 AM

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