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魔球の時代

1960年代の少年野球漫画のテーマの中心は「魔球」でした。タイトルに「魔球」をつけた『ちかいの魔球』や同じ原作者の『黒い秘密兵器』があり、『巨人の星』の大リーグボールで頂点に達したようです(いずれも『少年マガジン』連載)。

たぶん『マガジン』だったと思いますが、漫画の巻頭に実在の投手の魔球が特集されたことがあり、村山(阪神タイガース)のフォークボール、秋山(大洋ホエールズ)のシュート、金田(国鉄スワローズ)のカーブ、そして稲尾(西鉄ライオンズ)のスライダーが当時の代表的な「魔球」としてとりあげられ、球の握りなどが解説されていたことが記憶にあります。

ウィキペディアの見解によれば、野球漫画の魔球は忍術の延長線上にあったそうですが、もしこの時代にサッカー漫画があれば、分身の術を使って数的有利をつくるDFや、土遁の術を使って文字通り“消える”FWなんかが登場したんでしょうか。

ところで魔球という語ですが、日本最初の野球専門書といわれる中馬庚著『野球』(前川善兵衛,1897)中ですでに使用されているのです。中馬は「野球の名付け親」でもあるので、「魔球」という語も中馬の命名によるのかもしれません。中馬が使用した「魔球」の実体は、「速度ニ関スル者」すなわち剛速球と「方向ニ関スル者」すなわち変化球の2種類です。この時代すでに変化球でカーブとドロップを使い分けているのが興味深いところです。

1960年代には高校野球でカーブ以外の変化球を投げる投手はほとんどいませんでした。しかし、最近ではマー君こと楽天の田中やハンカチ王子こと早稲田の斉藤のようにスライダーなど当たり前のように放ります。フォークやツーシーム、果てはナックルまで使う投手もめずらしくありません。

こうした変化の背景には、硬球を使うリトルリーグ、シニアリーグ、ボーイズリーグの発展があるのは間違いないでしょう。野球も、高校生になるまでの段階では、サッカー並みに脱学校化しているように思えるのですが。

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