中等野球に関する野球統制令の内容
『東京朝日新聞』1932年2月27日付記事
“未公認大会に参加を禁止
全国、選抜大会は各一回を公認
中等学校野球統制
野球統制委員会の中等学校野球統制に関する審議会は廿六日午後六時から工業クラブで開催。森委員長を始め安藤、東、大村、桜井、長与、橋戸、平沼、槇、前田、宮原に山川文部省体育課長、岩原学校衛生官の各委員出席。体育審議会の答申による中等学校野球の統制に関する諸事項につき逐条的に審議決定し同夜発表を見た。右によれば従来各地で挙行されて居た全国優勝大会、又は選抜大会等は全国中等学校野球協会で審議の後、各一大会づつを公認し、未公認の大会には中等学校選手の参加を禁止する事となったので、兎角問題視されて居たこの方面の弊害は四月一日以降は一掃される事となった。尚地方大会で入場料が徴収され得る場合もその地方の府県団体が主催し、全国中等学校野球協会の公認を経なければならなくなったので、地方大会においても大いに清算されることとなる。これ等諸規定は小学校の場合と同様、協会未成立の間は文部省が代行機関となり、各諸規定も文部省訓令として通達されることとなる。決定した諸重要事項左の如し。
△中等学校の野球に関する事項
一、中等学校の野球に関しては府県の体育団体(府県当局者及び学校長と密接なる連絡を有し他の運動種目と共に野球を統制し得るもの)において本令の定む所に従ひ適当に統制すること。
二、野球試合は左記により開催せらるること。
イ、全国的優勝大会及び全国的選抜大会はそれぞれ年一回全国中等学校野球協会の公認の下に開催し得ること。但し明治神宮体育大会に関するものはこの回数に含まず。
ロ、地方大会(「府県対抗試合」又は参加学校が三府県以上にわたる試合をいふ)は関係府県の体育団体(第一項記載の事項参照)共同主催の下に同一地方に関し年一回に限り公認を受けて開催し得ること。
ハ、府県大会は府県の体育[団体](第一項記載の事項参照)の主催もしくはその公認の下に年一回開催し得ること。但し全国的優勝大会地方大会府県対抗試合の府県予選を別に行ふ場合はこの回数に含まず。
ニ、連盟試合(同一府県内に存する三校以上の学校間にて総当り式にて行はるるものをいふ)は近接する学校間にて予め関係学校長において協定をなし、関係学校共同主催の下に府県体育団体(第一項記載の事項を含む)の公認を得て開催し得ること。
ホ、府県内における二校間の対抗試合は当がい学校長において協定をなし、両校共同主催の下に開催し得ること。
へ、府県を異にする二校間の対抗試合はそれぞれ当がい学校長承認の下にその属する府県体育団体において協定をなし開催し得ること。
三、野球試合は総ての学業に差障なき時に行ふはもちろんなれども、時に対外試合は土曜日の午後、日曜日、祭日、休日、休暇に行ふこと。但し府県の事情によりこの期日に行ふを得ざる場合、府県体育団体においてその事情を具し、全国中等学校野球協会等の承認を得てこの期日外に行ふを許すこと。
四、中等学校生徒の参加する試合にして入場料を徴収せんとする時は主催者においてその件に関し承認を得べきこと。
五、試合の入場料は前項により承認を受けたる団体において処理し、その収支は試合終了後直に報告し、当がい学校は直接これに与らざること。参加学校において旅費滞在費等を受くる場合は必ず当がい学校の属する府県体育団体を経て収受すべきこと。
六、学校選手は当がい学年において進級せしものにして、転学者は転学校一ケ年を経過せるものたること。
七、学校選手にして全国的大会、地方大会、府県大会に参加する場合は必ず学校医の健康証明書を学校長より主催者に提出すること。
八、中等学校生徒にして学校を代表する試合に参加せんとするときはその都度学校長の許可を受くべきこと。
九、中等学校生徒は個人として入場料を徴収する試合に出場することを得ず。
十、中等学校選手は「クラブチーム」に加はり優勝大会若しくはこれに準ずべき試合に出場することを得ず。但し学校長の許可ある場合、学校を背景とする「チーム」に加はり府県体育団体の公認ある大会にして収入を伴はざるものに出場するはこの限りあらず。”
野球を統制したこの訓令がサッカーにも影響を与えたようなのですが、詳細については後日に。