満州国の国技は“蹴球”-読売新聞記事より
満州国の国技を蹴球と決定したと、いう興味深い新聞記事が存在することをご教示いただいたので、全文を紹介したい。満州事変後国際的に孤立した日本は満州国のFIFA加盟、極東大会参加を画策していたようだ。対応する大日本蹴球協会機関誌『蹴球』記事も掲載した。
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読売新聞(東京)昭和8(1933)年8月11日 朝刊第5面
足球(蹴球)を満州国技・・・・・ 毎年日本と対抗戦 スポーツの温ひ結び
[大阪電話]関西蹴球協会では大日本蹴球協会を代表し目下滞阪中の満州国体育協会代表と日満蹴球の談合協議会を九日午後七時から大阪市東区美津濃七階食堂で開催。
[日本側] 神田、田辺、斎藤、前田、奥野、永野、長井各理事
[満州国側] 茂木、久保田、巴、趙、黒田、奥野氏出席
種々協議の結果満州国体育協会創立第一総会の際満州国は足球(蹴球)を国技とすることを決議した。これに対し大日本蹴球協会は満州国に敬意を表すると同時に今後の発展を後援する意味で日満対抗蹴球試合を年中行事として日満両国を交互に会場として挙行することを約し、満州国側が正式にFIFA(国際蹴球協会)加入及び将来極東オリムピック大会参加に援助方を懇請したに対し極力努力することを約し同十時散会したが、大体以上の精神に基き左の諸項を決定し十日発表した。
一、日満両国の蹴球チームが今後双方から遠征する時は両国の協会の承認を要し試合規定、期日会場等の決定は相互の協会に斡旋を依頼すること
二、大日本蹴球協会主管大毎主催全国中等学校蹴球大会の優勝校と近く実現する満州国中等学校蹴球協会大会の優勝校と対抗試合を定期的に挙行するやう援助すること
三、日満両国対抗試合は原則として十、十一月中に挙行することとし今後両国はスケヂュール作成の際予め協定すること
四、大日本蹴球協会は満州国の希望によりコーチを派遣すること
五、満州国蹴球規則は大日本蹴球協会規則に准ずること
六、満州国の蹴球試合球は当分の内日本製品を使用し追って大日本蹴球協会購入球を試合用球と決定すること
七、新京に対抗運動場建設の際サッカーフィルドには技術的財政的援助を惜しまないこと
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読売新聞(東京)昭和8(1933)年11月26日 朝刊第5面
満州国技は蹴球 - いよいよ正式に決定
[新京廿五日発聯合]嘗て満州国では体育協会が主体となり国技の選定に就き研究中であったが廿五日満州国人が先天的に最も興味を有し且つ得意とする蹴球を以て国技となすに決定した、之と同時に体育協会では全国的に蹴球の普及を計る事となったが、更に来年五月マニラに於ける第十回極東選手権大会には是非とも選手を出場せしめる意気込みで直ちに準備に着手することになった。
鮮満対抗競技 なほ満州国体育聯盟幹事長茂木善作氏は過般来朝鮮体協主事竹内一氏との間に鮮満親善対抗競技を計画中のところこの程議熟しいよいよ毎年蹴球、陸上競技、籠球および排球(男女一組づつ)の対抗を交互主催の下に行ふ事に決定した。
陸上競技(百、四百、千五百、一万、高障、幅跳、高跳、棒、円盤、砲丸、槍、瑞典?走)
なほ朝鮮では朝鮮神宮大会直後、満州国では夏季休暇中に挙行することとし明治神宮大会の挙行される年は内地まで遠征し来ることに決定した。
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『蹴球 第6号 1933年10月』(p.4 4/18コマ目)
“満州国の問題
我が友邦満州国は建国一年、体育方面にもかなり進展をこころみてゐる。我協会も同国の蹴球発展には之に積極的援助を惜まざる所であったが先頃満州国文教部茂木善作氏、久保田定二氏、趙泰福氏、黒田善八、奥勝久、巴楚齢氏来朝ありたるに付大阪に於て関西協会の神田副会長、田辺主事、前田、斎藤、永野、奥野、長井各理事永井委員面談し種々会談をとげた。当日の会談の概要は左の通りである。
一、 満州国体育協会は昨年五月創立して日尚浅きも一般人士愛好の点よりして足球(蹴球)を国技とする事に決議し「日満提契は蹴球より」の実現を期す。
ニ、 両国チームの来訪は互に必ず大日本蹴球協会及満州国体育協会の手を通ずる事。
右通知なきチームの来訪は両協会の認可なきものと認む。
三、 チーム交換を希望す。
日本チームの満州国訪問は技術指導の為之を歓迎す。
満州国チームの招待を希望す。
来朝の時期は十月十一月頃が好都合。
四、 F・I・F・Aに加盟希望に付日本の紹介尽力を希望す。
五、 全国中等学校蹴球大会優勝者と全満州国中等学校優勝者との試合を希望す。
六、 満州国へ技術指導者の派遣を熱望す。
七、 満州国足球規則は大日本蹴球協会制定のものを基礎とし競技規則の規一をはかる事。”