日本サッカー・リーグ発足を伝える『読売新聞』記事
『読売新聞』1965年2月20日付
“日本サッカー・リーグ
8実業団5月発足 6都市を回り持ち
日本サッカー協会は十九日、昭和四十年度の事業日程を発表したが、今後の日本サッカーの主力となる「日本サッカー・リーグ」の発足が正式に決定、古河電工、八幡製鉄など八チームが初年度の参加チームに選ばれた。リーグは五月下旬-六月、九月-十一月上旬の約四か月間にわたって開かれる。全国的なリーグが組織されるのは、プロ野球以外のスポーツでは、はじめてのこころみ。
「日本サッカー・リーグ」の参加チームは、古河電工、日立本社、三菱重工(以上東京)八幡製鉄(北九州)東洋工業(広島)ヤンマー・ディーゼル(大阪)名古屋相銀(名古屋)豊田自動織機(刈谷)の八チーム。それぞれの都市をフランチャイズとして、二回戦総当たりのホーム・アンド・アウェー方式(一つのカードを、それぞれの地元で一回ずつ、計二回行なう)で試合をする。このため一チームの試合数十四試合、総試合数は五十六試合となる。日本リーグの目的は、選手強化のため、強いチーム同士の試合をふやすとともに、よい試合をファンにみてもらって普及に役立てることだが、将来は地域のリーグ組織をつみ重ねて、ヨーロッパと同じサッカーの組織を作ることをねらっている。
なおこれまでの都市対抗選手権と全日本実業団選手権は発展的に解消して、全国社会人選手権とし、その上位二チームとリーグの下位二チームの入れかえ戦をする予定。昭和四十年度のおもな日程はつぎの通り。
(以下略)”
“これまでの都市対抗選手権と全日本実業団選手権は発展的に解消”して新リーグが誕生したのですが、経済的な負担は選手権よりリーグの方が少ないことを以下の牛木素吉郎氏の記事が伝えています。
『読売新聞』1965年2月24日付
“外野席
サッカー組織の革命
「日本にプロ・サッカーができるんですか?」―サッカー関係者は、このごろ、こんな質問をよく受ける。日立本社、八幡製鉄など、実業団の強豪八チームを集めて、五月から「日本サッカー・リーグ」が発足するが、全国をまたにかけたリーグの組織は、これまでプロ野球のほかになかったからだ。だからサッカーの全国リーグがプロ、あるいは、セミ・プロをめざすものと思われても無理はない。
しかし、リーグに加わった実業団チームは、セミ・プロ化するつもりは、まったくない。八幡製鉄のマネジャーは「プロどころか、八幡が地元でやる七試合については、入場料をとったら、お客さんが集まらない心配がある。タダなら電車賃をかけても見にくるが、有料では、隣でやっていても敬遠するのが、つましい地方の人の気風だ」という。八幡の場合、これまで都市対抗や、実業団選手権の予選、本大会に遠征する経費が百万円以上もかかっていた。それが、この日本リーグ一本になれば、十分予算内でまかなえる見通しだそうだ。
協会の役員も、日本リーグの目的は「選手強化が第一。地方の人に良い試合をみせて、普及の役に立てるのが第二だ」といっている。だが、そのような当面の目標のほかに、この試みは日本のサッカー組織の革命のはじまりだ、ということを忘れてはならない。日本リーグの下に関東リーグ、さらに、埼玉リーグというように、全国のチームがリーグの積み重なりの中に包みこまれる―これが将来の姿である。
イギリスでも、ドイツでも、サッカーの先進国は、みなそういう組織だ。そして、西ヨーロッパや南アメリカでは、頂点の全国リーグは、プロかセミ・プロである。だから、日本の将来に、プロの姿が描かれるのは、必ずしも見当はずれではない。国際オリンピック委員会のブランデージ会長が「サッカーでは、プロとアマがひとつになっている」と非難するのも、このこと。日本では、ブランデージ氏のいうことが絶対に正しいと思われているが、サッカーの組織には、ブランデージ氏の知らない長所もある。日本リーグの発足を機会に、そういうことを見直してほしいのである。(牛木)”
チーム力に差のあるチームが当る可能性があるトーナメント戦よりも、一定のレベル以上の強豪同士のリーグ戦の方が、“選手強化”に効果的であるのはいいうまでもありません。“八幡の場合、これまで都市対抗や、実業団選手権の予選、本大会に遠征する経費が百万円以上もかかっていた。それが、この日本リーグ一本になれば、十分予算内でまかなえる見通しだそうだ。”とありますが、マネジャーの立場からしても、勝ち進むほど経費がかかり、支出の予定が不明のトーナメント戦よりも、支出の予定を見込めるリーグ戦の方が合理的であったようです。
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