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岡部平太のパリ・オリンピックサッカー観戦記⑥ 「瑞西対チェコスロバキア」『世界の運動界』より

参考:1924年パリ・オリンピック記録(FIFA)

瑞西対チェコスロバキア チェコスロバキア遂に敗る

五月三十日

 延長戦に入って勝敗決せず引分けとなった両ティームは一日静養の後今日ベルゼール競技場で再び相対峙した。ゲームは最初から緊張戦であった。野性を帯びたスラブ魂が委員会に禍ひしたのだらう。チェックの闘将センター、ホワードのノバックはこの前の試合の時塁前でやった反則が問題となって、今度のオリンピック会期中出場禁止といふひどい懲罰を受けて終った。瑞西軍も前回の経過に見て中老株の選手を全部退けて新進気鋭のプレヤーを以て陣容を堅めた。中堅の主将シュメッデンさへ変ってゐる。両軍共、相手の弱点を十分呑み込んでゐる。チェコスロバキアは早くもスイスのレフトより廻り始めて塁を脅かした。然しチェコスロバキアにも亦右翼に欠陥があった。そこを衝く目的で、スイスはレフトウイングに素敵なスプリンターを配置して急迫した。特にスイスは第一回戦に比して前衛の連絡よく中堅も極めて攻撃的戦法を取って敏捷なティームワークを示した。

 チェック左、右に隅蹴を得たるもインナー、ヘッデングの機会を逸す。前半戦の終りにスイス、サイドを廻しレフトよりライト、ライトよりインナーに送りたるも塁前のシュート柱を越へ機会去る。好戦好防、得点なくして前半戦のタイムは尽きた。チェ軍稍有利也。

 後半戦、チェコスロバキアはまぶしい夕陽に向って立った。キック、オフの球をライトより抜きゴール前の混戦となりたるも大きいキックに盛り返さる。中堅の圧迫たらず、スイスも亦肉迫したれ共インナー、シュートをあやまる。戦ひは殆んど互角に進んでタイムは残り十分となった。スイスは闘将の左翼フェスレル負傷して退場し、チェコスロバキアのフルバックは左右共全く疲労し切ってゐる。ゴールキーパーは共に美事なプレーをやった。誰の目にもゴールインと見へる熱球を危機一髪の間に防ぎ止めた事が何度であったか知れない。タイムはもう残り五分となった。

 三分も過ぎた。さうして今日も亦延長戦かと思はれた時、機会が持って来た様なヒョロヒョロした球がチェコスロバキアの陣の右の隅からフラフラとゴールへ向って飛んで来た。前進してゐたキーパーの上を越へて柱の横木の前面に当り、滑り気味に丁度そこに待ってゐたスイスの右翼のすぐ前に落ちた。ライトは極く軽く蹴った。塁手は身を隼の様に翻へしたが其時球は一呎の前を通ってゴールインした。

 さしもの混戦も斯くして終った。この試合によって廿二のティームが八つになった。”(p.287-289)

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