岡部平太のパリ・オリンピックサッカー観戦記③ 「仏蘭西レトニアに勝つ」『世界の運動界』より
参考:1924年パリ・オリンピック記録(FIFA)
“仏蘭西レトニアに勝つ
五月二十七日 巴里球技場といふのは工場裏の板囲ひの芝生で国際競技の晴れの舞台としては気の毒な程貧弱なものであった。見物も亦今日の試合を見縊ってか、仏蘭西の応援が三千人ばかり集まって居るに過ぎなかった。
定刻五時、仏蘭西は例によって縹色に緋色の華々しいユニホームで入場した。レトニアは海老茶に白絹のパンツで体格は立派だった。ゲームはレトニアのキック・オフで始められたが非常に鈍いテームワークだった。キックは不正確だし、パスは方向を誤り敵に取られ仏蘭西のシュートも常に機会を失し国際競技級のティームとしてはひどく見劣りがした。
仏蘭西軍の主将ダブレー左翼より好蹴を放ちたるも右翼ゴール前のヘデングを失して入らず、仏蘭西軍は常に派手なプレーを好み見物も亦長いボレー等が飛ぶと無性に喜ぶ。さうして稍乱暴な突撃に試合慣れて居ないレトニアのテームは何時もスタートを誤り其長身長脚をもてあます様に見へた。仏蘭西軍敵のペナルテー・エレア内の混戦からレフト・インナーに行きシュートして一点を先取した。
続いて左翼よりセンターにパスし其球は地を辷って居るのに塁手滑り倒れ簡単なゴール・インとなった。三十分。
レトニアのティームはフルバックあたりで時々長蹴するが本当に下手なテームであった。現在の日本テームだって慥かに勝てる位のテームだった。
仏蘭西も前後合計七点を入れたがあまり光栄ある得点ではなかった。コンビネーションの技巧を心得て居るといふ外上手ぢゃない。極東大会に於ける比律賓、支那級のテームに見へた。ただ相手が弱いので、仏蘭西の見物は得意だった。
この日コロンバスフヰールドでは、和蘭がルーマニアに勝った。
仏蘭西 7-0 レトニア
和蘭 6-0 ルーマニア”(p.277-278)
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