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岩谷俊夫氏によるローマ・オリンピック予選対韓国戦の総評

プロ・コーチの採用が提言されている。

『毎日新聞』1959年12月22日付

日韓サッカー戦の教えるもの
    第二戦の勇気と闘志で

日本対韓国のローマ・オリンピック・サッカー予選は1勝1敗、得点合計で韓国の勝となったが、試合ぶりからみて第一戦が韓国の完勝、第二戦が日本の完勝と両極端をゆく結果に終った。「やりさえすれば勝てるじゃないか」が第二戦の興奮に接した人々の印象だったようだ。たしかにアジアで一位か二位の韓国を優勢のうちに破ったのは画期的なことだ。しかしこの試合をめぐって残された問題は多い―。

【第二戦に日本はなぜ勝ったか】二十日夜の日韓お別れパーティーで、韓国の“サッカーの神様”金容植コーチは「我々はこの五ヵ年地をはうような短いパスをやり続けてきた。第二戦で日本のすばらしい出足と雨の中のキック力には参った。しかし習慣として韓国は雨に有効な弧を描くようなキックがもうできなくなっていますよ」と語った。

昭和二十九年、雪中の世界選手権極東予選で日本をキック・アンド・ラッシュ攻めで破った韓国にしてこの表現である。

「キック・アンド・ラッシュもいいけれど、問題はボール・コントロールなんですよ」ともいった。聞きなれたお説教だが“神様”が、その後輩である筆者(金コーチは早大出、ベルリン日本代表)にさとすようにいうだけにそのひびきが違う。日本の選手を一人一人とってみた場合、浮き球の処理力、速いシュート、すべてみた目ではどこへ出してもヒケをとらぬ。しかし、そのボール・コントロール力が「対敵動作」でかけひきまでいかぬところにまだ重大なものが欠けている。

この不足分を第二戦に「根性」と「覇気」で補ったわけで、そこに「やればできる」という結果が出たのだ。

【プロ・コーチか芝生か】日本のコーチは理論的にはすぐれているが、みっちりコーチできる環境の人は一人もいない。そこでようやく協会もプロ・コーチの招請に真剣になりだした。二十日の理事会ではインドネシアをA級に仕上げたユーゴのコーチをこのさい呼んでみては、というところまで話が出た。もう一つ芝生のグラウンドがないからボールを意識しないボール・コントロールがうまくならないという理由もある。一度に手をつけるわけにもゆくまいが、このさいまず思い切ってプロ・コーチを雇ってみてはどうだろうか。

ボール・コントロールのうまいチームが一つでもできそのチームに勝つためにはボール・コントロール以外にないことが、他のチームに及べば成功だ。ただし、この決断は日本が国内だけのものに甘んじないで、国際入りしようとしているのかどうかの政治力にかかっている。いまはその瀬戸際といってよい。

【キック・アンド・ラッシュが先きではない】日本の活動力、勇気、勝魂すべては第二戦のキック・アンド・ラッシュで証明された。これだけの出足のきく民族であることが再認識されたわけだ。しかしそれはキック・アンド・ラッシュがよかったのではなく、ある程度国際級に近づいた「足技」があのせっぱつまった瞬間にものをいったまでだ。今後は平静なおりでも相手あってのサッカーという「対敵ボール・コントロール」へ引上げることが肝心なのである。

勇気が証明された以上、日本のフットボーラ―たちはまたはじめから「球扱い」をやり直してもらいた。それ以外国際サッカーに通ずる近道はない。「やればできる」では現状から一歩も出ない。
   
                                 (岩谷)”

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