『全国五十万円以上資産家表』(時事新報社 1916)
大正5年の長者番付『全国五十万円以上資産家表』(時事新報社 1916)。
全国一は東京府の「2億円以上」岩崎、三井両家。岩崎久弥の住所は「本郷区湯島切通坂町」となっているが、これは三菱財閥の本邸だった現在の旧岩崎邸庭園。
大阪府のトップは住友吉左衛門で7千万円。3大財閥といわれているが、三井、三菱とはかなりの差が。
同じく大阪府の6番目は範多竜太郎の1千3百万円。範多竜太郎は神戸一中蹴球部主将で、慶應に進学し、アソシエーションフットボールクラブを創設(後に体育会ソッカー部)した範多竜平の父。その父、E.H.ハンターは現在の日立造船の創業者で、その居宅神戸北野地区を代表する西洋館、旧ハンター住宅は国指定重要文化財。
同じく大阪府の380万円に位置する杉村正太郎は、1927年極東選手権日本代表の杉村(野村)正二郎、杉村正三郎兄弟(共に早大)の父で杉村倉庫創業者。江戸時代船場で錫屋という両替商を営んでいた杉村家を、明治大阪財界の指導者五代友厚のアドバイスにより、新田開発で得た海岸近くの土地を生かして倉庫業を創業した。その左横の350万円野村徳七は野村証券創業者。
同じく大阪府の120万円に位置する田辺五兵衛は日本サッカー殿堂掲額者14代田辺五兵衛(治太郎)の父。江戸時代から続く道修町の薬種商だった田辺家を近代的製薬会社に脱皮させた人物。
兵庫県の80万円に右近和作、右近福次郎の両氏がいるが、ベルリン・オリンピック日本代表右近徳太郎(神戸一中→慶應)の血縁だろうか。
エリートのスポーツとして普及した戦前の日本サッカー関係者には、大金持ちの家に生まれた人が多くいたことは間違いない。
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